要素①
企業価値担保権の創設
土地・建物等の不動産だけでなく、御社の事業そのもの(のれん・ノウハウ・販路・顧客基盤・ブランド等の無形資産を含む)を担保にできる新しい担保制度。担保権者は信託会社等に限定。
2026-05-25 施行 / 法制度ガイド
2026年5月25日、事業性融資推進法(企業価値担保権の創設に関する法律)が施行されました。これにより、銀行は不動産や経営者個人保証ではなく、御社の「事業の実態と将来性」を担保に融資を実行できるようになります。本稿では、この法制度の本質、企業価値担保権の正体、銀行RMが御社の事業計画書で見る12項目、2026年に準備すべき情報開示資料リスト、そしてよくある誤解を、中小企業オーナーの立場から解説します。
01
法の本質
事業性融資推進法は、令和6年6月14日に公布、令和8年(2026年)5月25日に施行された、金融庁・経済産業省・法務省の三省共管法です。正式名称は「事業性融資の推進等に関する法律」です。この法律のポイントは5つの要素に集約されます。
要素①
土地・建物等の不動産だけでなく、御社の事業そのもの(のれん・ノウハウ・販路・顧客基盤・ブランド等の無形資産を含む)を担保にできる新しい担保制度。担保権者は信託会社等に限定。
要素②
経営者個人保証は、原則として求めない・解除する方向に。すでに「経営者保証に関するガイドライン」(令和3年10月改訂版)で示されていた3要件「法人と経営者との関係の明確な区分・分離、財務基盤の強化、適切な情報開示等による経営の透明性確保」の運用強化。
要素③
金融庁の「事業性融資の推進等に関する法律等に関するガイドライン」(令和7年5月)に基づき、銀行は経営者(事業)・企業を取り巻く環境/関係者・内部管理体制の3視点で融資先を評価。
要素④
融資後、銀行は決算書を待つだけでなく、6ヶ月ごとの試算表・事業計画との乖離状況を定期的に確認することが「中間管理の第一歩」と位置付けられます。
要素⑤
「決算書」だけでなく、無形資産(技術力・知的財産・人的資本・販路・ブランド)に関する情報、コンプライアンス対応、サステナビリティ実績まで含めた事業評価が、融資判断の正式な対象に。
出典: 金融庁「事業性融資の推進等に関する法律等に関するガイドライン」(令和7年5月)、経済産業省「事業性融資推進法 概要」、企業価値担保権の創設に関する法律(令和6年法律第54号)
02
企業価値担保権とは
これまでの担保制度は、不動産・在庫・売掛金等の「目に見える資産」が中心でした。事業性融資推進法によって創設された「企業価値担保権」は、無形資産(のれん・ノウハウ・販路・顧客基盤・ブランド・人材・特許・商標等)を含む御社の「事業全体」を担保にできる、新しい仕組みです。
これは、不動産を持たないサービス業・IT企業・職人技に依存する町工場・地方の中小製造業にとって、極めて大きな転換点です。なぜなら、「うちには担保にできる土地がない」という理由で融資条件が不利だった会社が、初めて「事業そのものの強さ」で評価されるからです。
ただし、企業価値担保権を活用するためには、銀行に対して御社の事業の実態を「証拠付きで」示せる状態が必要です。「うちは技術力がある」「ブランド力がある」と口頭で言うだけでは足りません。技術力なら、特許出願実績・取引先からの引き合い実績・現場の品質管理ログ。ブランド力なら、メディア掲載実績・採用候補者の応募動機分析・取引継続率の経年推移。販路なら、新規取引先獲得の経路・既存取引先のリピート率・サプライチェーン上のポジションが分かる資料。こうした「無形資産を可視化する事実」を、銀行RMが定期的に確認できる形で保持していることが、企業価値担保権を活用した有利な融資条件の前提です。
03
銀行RMが事業計画書で見る12項目
経済産業省「ローカルベンチマーク」の6つの財務指標と4つの非財務視点を基に、事業性融資推進法施行後、銀行RMが御社の事業計画書・試算表で確認する12項目を整理しました。これは、御社が「いつ・何を・どの形式で」銀行に提示できるかを点検するチェックリストです。
01
財務
売上高増加率
02
財務
営業利益率
03
財務
労働生産性
04
財務
EBITDA有利子負債倍率
05
財務
営業運転資本回転期間
06
財務
自己資本比率
07
非財務
経営者(代表者の経歴・後継者問題・関与度)
08
非財務
事業(業種特性・強み・差別化要因・販路)
09
非財務
企業を取り巻く環境(顧客・取引先・市場動向)
10
非財務
内部管理体制(組織・人事・コンプライアンス)
11
拡張
コンプライアンス対応(法令遵守・SSBJ等の規制対応)
12
拡張
サステナビリティ実績(GHG・人権DD・取引先要請対応)
出典: 経済産業省「ローカルベンチマーク」(財務6指標+非財務4視点)、金融庁「事業性融資の推進等に関する法律等に関するガイドライン」(令和7年5月)、Marupassが項目11-12を拡張
04
2026年に準備すべき情報開示資料
財務基盤
経営者保証ガイドライン3要件②「財務基盤の強化」の運用上、半期ごとの自発的提出が「適切な情報開示」の最低ライン。
事業計画
計画と実績の乖離を、銀行RMが半期ごとに確認。乖離理由を説明できる体制が「中間管理」の前提。
無形資産
企業価値担保権を活用した有利な融資条件の根拠資料。特許出願・採用実績・取引継続率・メディア掲載実績を、出典付きで保持。
コンプライアンス
中小企業の25.7%が既に取引先からGHG・サステナビリティ要請を受領(日本商工会議所 2024年6月調査)。対応状況は「事業の継続性」評価の対象。
サステナビリティ
2027年3月期からSSBJ強制適用が始まる上場会社のサプライチェーン企業として、要請波及は既に始まっている。早期準備が有利な融資条件の交渉材料に。
05
よくある誤解 Q&A
Q. 当社は不動産を持っているから、企業価値担保権は関係ないのでは?
A. 不動産担保 + 企業価値担保権の併用は可能です。むしろ、不動産の評価額に依存しない融資交渉力を持つことは、不動産価格が下落局面に入った2026-2027年において、有利な融資条件を確保する手段になります。「持っている資産で借りる」から「事業の強さで借りる」への移行は、不動産保有企業にも有効です。
Q. 当社はメインバンクとの関係が長く、毎期問題なく融資を受けられている。新法は関係ない?
A. 法施行後、銀行は「事業性評価」を融資判断の正式項目に加える方向です。決算書だけを見るRMの裁量は徐々に縮小し、本部の評価基準で機械的に判定される割合が増えます。長年の関係性は「経営者保証ガイドライン3要件①法人と経営者の区分・分離」と「③経営の透明性確保」を満たしていることを示せて初めて、融資条件として活きます。
Q. うちは年商10億円未満の小規模企業。SSBJもCBAMも関係ない。
A. 直接適用は確かに関係ありません。しかし、御社が大手企業(プライム上場の親会社・取引先)のサプライチェーンに入っている場合、2027年3月期以降、その大手企業から「Scope 3カテゴリ1(購入した製品・サービス)」のGHG排出データ提出を求められます。これは2024年6月の日本商工会議所調査で、既に中小企業の25.7%が経験している現実です。
Q. 情報開示資料の準備って、結局Excelで作るんですよね?
A. これまではそうでした。事業性融資推進法施行後は、銀行が中間管理で6ヶ月ごとに確認する資料を、Excelで毎期作り直すことが現場の事務負担として顕在化します。Marupassは、御社が普段の業務で扱う書類(請求書・採用通知・サプライヤーレポート等)から、必要な情報を自動で整理し、銀行・取引先・採用候補・メディアに届く形に組み替えるPR自動化クラウドです。
次の一歩
Marupassは、御社の毎日の業務から、銀行・取引先・採用・メディアに届く事実を、毎週自動で整える PR自動化クラウドです。事業性融資推進法施行後、銀行RMが御社に求める12項目の準備を、特別な作業なしに進められます。